いものびと講座 3-2 詳しい説明2(状態図) www.asaichuzo.com

鋳物の凝固は大変複雑です。

特にダクタイル鋳鉄については一層複雑になっています。

前のページの状態図において,αγ などの記号が入っているところがあります。
これは何かというと,鉄の種類を表しています。
温度によって鉄は組織形態が変化します。その形態によって鉄の呼び方があり, 上の記号はその形態を示しています。

温度により鉄の結晶構造が変化するので,それに応じて体積が変化します。

純鉄の場合,910度でα鉄からγ鉄へ, 1390度でγ鉄からδ鉄に, 1534度で融点に達し液体になります。
このときの体積変化はα→γの時減少,γ→δの時増加します。
その理由は,α,δ鉄は結晶構造が体心立方格子であり, γ鉄の面心立方格子よりも鉄の原子の配列の仕方が粗いためです。

ここで鋳鉄に話を戻します。
鋳鉄も鉄の合金なので,程度の違いはあるにしろ,同じような現象が起こります。
その上,鋳鉄は鉄に比べ炭素の含有率が高いため,炭素が結晶として析出してしまいます。 そのため、炭素の結晶分の体積が増えてしまい,体積が増加します。
このような現象の起こる鋳鉄製品を,思い通りの形に作り上げることは, 一般に考えられている以上に難しく,相当の経験や知識が必要です。
そのため多くの研究者や企業などで議論され、 コンピュータ等を使って凝固解析や流動解析などを行えるようになり 現在ではある程度の不良低減につながっています。
しかしそれでも完全なものではなく、結局は大小企業を問わず過去の経験から手探りで鋳造している、というのが現状のようです。